Column ・ 管理 ・ Vol.38

賃貸借契約書の特約の作り方|有効な特約・無効になりやすい特約

特約を入れておけば安心とは限りません。特約が有効と認められるための考え方と、無効になりやすい特約の例を整理します。

契約書に特約さえ書いておけば思い通りの内容にできると考えているオーナー様もいますが、特約には有効と認められるための条件があります。原状回復ガイドラインで触れた負担区分の考え方をふまえつつ、有効な特約と無効になりやすい特約の考え方を整理します。

この記事の要点
  • 特約は、当事者の合意によって法律の任意規定と異なる内容を定めるもので、賃貸借契約でも広く使われている。
  • 特約が有効と認められるには、内容が明確であり、借主が合理的な範囲でその内容を認識・合意していたことが重要とされる。
  • 消費者契約法上、消費者である借主に一方的に不利益な条項は無効と判断される場合がある。
  • 敷引きなど金銭的な特約は、金額が家賃や契約期間に照らして高額に過ぎる場合、無効と判断される可能性がある。
  • 通常損耗の補修費用を借主に負担させる特約は、範囲や金額があいまいなままだと無効と判断されるリスクがある。

特約とは何か|賃貸借契約における位置づけ

特約とは、当事者間の合意によって、法律の任意規定とは異なる内容を契約に盛り込むことをいいます。賃貸借契約でも、原状回復の範囲や更新料、禁止事項など様々な特約が用いられています。特約自体は契約自由の原則のもとで認められていますが、内容によっては後から無効と判断される場合がある点に注意が必要です。

特約が有効と認められるための基本的な考え方

特約が有効と認められるには、一般的に、対象となる工事や費用の範囲・内容が具体的かつ明確であること、借主がその内容を認識したうえで合意していたと客観的に認められること、内容が社会通念上合理的な範囲にとどまっていることが重要とされています。契約書に条文として記載されているだけでなく、重要事項説明などを通じて借主に十分説明されていたかどうかも、有効性の判断材料になり得ます。

無効と判断されやすい特約の例(消費者契約法との関係)

消費者契約法では、消費者である借主の利益を一方的に害する条項や、消費者の義務を加重するような不当な条項について、無効となる場合があると定められています。賃貸借契約においても、借主に一方的に不利益な内容の特約は、この消費者契約法の規定との関係で無効と判断されるリスクがあります。特約を定める際は、貸主側の都合だけでなく、内容が合理的な範囲にとどまっているかを意識する必要があります。

原状回復に関する特約で注意したい点

原状回復ガイドラインでは、通常の使用による損耗(通常損耗)の回復費用は、本来貸主が負担すべきものとされています。これを借主負担とする特約を設ける場合、対象となる工事の範囲や借主が負担する金額の目安を明確にし、借主がその内容を認識したうえで合意していたと認められることが必要です。範囲や金額があいまいなまま一方的な負担を課す内容の特約は、無効と判断される可能性があります。

特約を定める際の実務上の工夫

特約を有効なものとするためには、契約書の条文を明確な文言で記載するだけでなく、重要事項説明の場で口頭でも説明し、借主が質問できる機会を設けることが望ましいといえます。特に金銭的な負担を伴う特約(敷引き、原状回復費用の借主負担など)は、金額や算定根拠を具体的に示しておくことが、後のトラブル予防につながります。

特約でトラブルになりやすいケースと予防策

特約をめぐるトラブルの多くは、契約時の説明が不十分なまま、退去時になって初めて特約の内容が問題になるというパターンで発生します。契約書のひな形を使い回す場合でも、特約の内容が現在の法律や判例の考え方に照らして問題ないか、定期的に見直すことが望まれます。特約の作成や見直しにあたっては、内容によっては弁護士など専門家に確認することをおすすめします。

よくある質問

特約を入れておけば貸主に有利な内容でも有効になりますか?

そうとは限りません。内容が消費者契約法に照らして消費者である借主に一方的に不利益と判断される場合、特約自体が無効とされる可能性があります。

敷引き特約はどのような場合に問題になりますか?

金額が家賃や契約期間に照らして高額に過ぎる場合、消費者契約法に基づき無効と判断される可能性があるとされています。金額が社会通念上相当な範囲にとどまっているかが判断材料になります。

通常損耗の補修費用を借主負担とする特約は有効ですか?

対象範囲や金額が明確で、借主がその内容を認識したうえで合意していたと認められる場合は有効とされる余地がありますが、範囲があいまいなまま一方的に負担を課す内容は無効と判断される可能性があります。

まとめ

特約は契約内容を柔軟に定められる一方、内容が消費者契約法などに照らして不当と判断されれば無効になるリスクがあります。特約を定める際は、範囲・金額を明確にし、借主への説明を尽くすことが重要です。個別の特約の有効性については、弁護士など専門家に確認することをおすすめします。

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