Column ・ 管理 ・ Vol.29

賃貸経営の法人化を考えるタイミング

所得規模が大きくなってきた賃貸オーナー向けに、法人化によって何が変わるのか、検討を始める目安を整理します。

所得規模が大きくなってきた賃貸オーナーの中には、法人化(資産管理会社の設立など)を検討する方もいます。法人化によって何が変わるのか、検討を始める目安とあわせて整理します。

この記事の要点
  • 賃貸経営の法人化とは、個人で所有・経営していた賃貸物件を、法人(資産管理会社など)を通じて運営する形態に切り替えること。
  • 法人化により、所得税ではなく法人税の税率が適用され、経費にできる範囲や家族への給与支払いなど、選択肢が広がる場合がある。
  • 不動産所得が一定規模を超えると、法人化によって税負担が軽減される可能性があるとされるが、個々の状況によって異なる。
  • 法人化には設立費用や税理士報酬など、個人経営にはないコストが発生する。
  • 法人化の是非は、所得水準や物件規模、将来の相続対策なども踏まえて、税理士に相談しながら判断することが望ましい。

賃貸経営における法人化とは

賃貸経営の法人化とは、個人で所有・運営していた賃貸物件について、資産管理会社などの法人を設立し、その法人を通じて賃貸経営を行う形態に切り替えることをいいます。物件を法人に売却する方法、法人が建物のみを所有する方法など、いくつかのスキームがあり、どの方法を選ぶかによって必要な手続きや税務上の影響が異なります。

法人化によって変わること

法人化すると、個人の所得税・住民税ではなく法人税が適用されるほか、役員報酬として家族に給与を分散できる、経費にできる範囲が広がるなど、税務上の選択肢が増える可能性があります。具体的な影響は所得水準や家族構成によって異なります。個人の所得税は所得が増えるほど税率が高くなる累進課税である一方、法人税の税率は所得の増減による変動が比較的小さい点も、検討材料の一つになります。

法人化を検討する目安

一般的に、不動産所得が一定の水準を超えてくると、所得税の税率よりも法人税率のほうが低くなる場面が生じ、法人化によって税負担が軽減される可能性があるといわれています。ただし、どの水準から有利になるかは個々の状況(他の所得の有無、経費の状況など)によって異なるため、一律の基準はありません。給与所得など他の所得と合算して税率が決まる個人と異なり、法人は不動産所得を独立して計算できる点も、判断材料の一つとされています。

法人化のデメリット・注意点

法人化には、法人の設立費用、税理士への顧問報酬、社会保険への加入義務など、個人経営にはなかったコストや事務負担が発生します。また、いったん法人化すると個人に戻すことも容易ではないため、慎重な検討が必要です。物件規模が小さいうちに法人化すると、かえってコスト負担のほうが大きくなってしまう可能性もあるため、規模感とのバランスを見ることが欠かせません。

法人化の一般的な進め方

法人化を進める際は、まず税理士に現状の所得や物件規模を伝え、法人化した場合のシミュレーションを行ってもらうのが一般的な進め方です。そのうえで、法人の形態(新設法人か既存の会社の活用か)、物件の移転方法(売買か、新規購入分から法人名義にするか)などを検討していくことになります。物件を法人に売却する場合は、金融機関との間で融資の借り換えや承諾が必要になることもあるため、あわせて相談しておくと安心です。

よくある質問

法人化すればどんなオーナーでも節税になりますか?

一概にはいえません。所得水準や物件規模、他の所得の有無によって効果が異なるため、個別のシミュレーションが必要です。

法人化を検討する目安はありますか?

不動産所得が一定規模を超えてきたタイミングで検討されることが多いですが、明確な基準があるわけではありません。税理士に相談し、試算をもとに判断することをおすすめします。

法人化すると相続対策にもなりますか?

法人を活用した相続対策の手法もありますが、物件の状況や相続人の構成によって適否が異なります。相続を見据える場合は、税理士など専門家に早めに相談することをおすすめします。

まとめ

賃貸経営の法人化は、税務上の選択肢を広げる一方、設立費用や事務負担といったコストも伴います。効果は所得水準や物件規模によって異なるため、税理士に相談しながら、シミュレーションをもとに慎重に判断することが大切です。焦って結論を出す必要はなく、複数年分の試算をもとに、じっくり検討することをおすすめします。

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