店舗や事務所として物件を貸す場合、住居として貸す場合とは異なり、賃料に消費税が課税されます。インボイス制度の導入によって実務上どのような対応が必要になるのか、基礎知識を整理します。
- 住宅の家賃は原則として消費税が非課税とされているが、店舗・事務所など事業用の賃料は消費税の課税対象となる。
- 課税売上高が一定基準を超えるオーナーは消費税の課税事業者となり、事業用賃料に消費税を上乗せして請求する。
- インボイス制度のもとでは、借主(テナント)側が仕入税額控除を受けるために、貸主が発行する適格請求書(インボイス)が必要になる場合がある。
- 適格請求書発行事業者として登録するには、税務署への登録申請が必要。
- 免税事業者のままでいる場合、テナントとの契約条件(賃料額や控除の可否)に影響する可能性があるため、事前の検討が望ましい。
住居用賃貸と事業用賃貸の違い
住宅として貸す場合の家賃は、消費税法上、原則として非課税とされています。一方、店舗や事務所など事業用の物件を貸す場合の賃料は、消費税の課税対象となります。同じ賃貸経営でも、用途によって税務上の扱いが異なる点をまず押さえておく必要があります。同一建物内で住居部分と店舗部分を併せ持つ物件では、賃料をあらかじめ用途ごとに区分しておくことが実務上重要になります。
事業用の賃料には消費税がかかる
事業用物件のオーナーが消費税の課税事業者に該当する場合、賃料に消費税を上乗せして請求することになります。課税事業者に該当するかどうかは、基準期間における課税売上高などによって判定されるため、住居系の物件と店舗・事務所を併せて所有している場合は、事業用部分の売上規模を把握しておく必要があります。判定の考え方は個々の事業構成によって異なるため、顧問税理士に確認しながら整理することをおすすめします。
インボイス制度と適格請求書発行事業者の登録
インボイス制度(適格請求書等保存方式)のもとでは、借主であるテナント事業者が支払う賃料について仕入税額控除を受けるためには、原則として貸主が発行する適格請求書(インボイス)の保存が必要とされています。貸主が適格請求書発行事業者として登録していない場合、テナント側の税負担に影響が生じる可能性があります。振込での支払いが中心の賃貸借契約では、契約書と通帳・振込明細を組み合わせて適格請求書の記載事項を満たす運用が取られることもあります。
免税事業者のままでいる場合の影響
課税売上高が少なく免税事業者のままでいることを選ぶオーナーもいますが、その場合、貸主は適格請求書を発行できません。テナントが仕入税額控除を受けられなくなることを理由に、賃料の見直しや契約の見送りを打診されるケースも想定されるため、事業用物件を貸すオーナーは登録の要否を検討しておく必要があります。
契約時に確認しておきたい実務ポイント
事業用物件の契約時には、賃料が税込・税抜のどちらで表示されているか、貸主が適格請求書発行事業者に登録しているかどうかを、契約書や重要事項説明の中で明確にしておくことが望ましいといえます。制度の詳細や自社の状況に応じた判断は、税理士に確認しながら進めることをおすすめします。管理会社が契約実務を担う場合も、テナントから登録状況を問い合わせられることがあるため、あらかじめ情報を共有しておくと安心です。
よくある質問
住居兼事務所として貸す場合、消費税はどうなりますか?
契約の実態や用途の割合によって扱いが異なります。事業用途の部分については課税対象となる可能性があるため、個別に確認が必要です。
免税事業者のままだとテナントに貸せなくなりますか?
貸せなくなるわけではありませんが、テナントが仕入税額控除を受けられないことを理由に、賃料交渉や契約条件に影響が出る可能性があります。テナントの事業内容によって影響度は異なります。
適格請求書発行事業者の登録は誰でもできますか?
課税事業者であれば登録が可能です。免税事業者が登録する場合は、課税事業者を選択する必要があるなど手続きが伴うため、税理士に相談することをおすすめします。
まとめ
店舗・事務所として物件を貸す場合、住居用とは異なり賃料に消費税が課税され、インボイス制度への対応も必要になります。適格請求書発行事業者の登録の要否は、テナントとの関係や自身の課税売上高を踏まえて、税理士に相談しながら判断することが大切です。