賃貸の契約時に「家財保険料 20,000円(2年一括)」といった項目を払った記憶がある方は多いと思います。これは火災保険の一種で、家財の補償に、大家さんへの賠償(借家人賠償責任)と、他人への賠償(個人賠償責任)が組み合わされた商品です。2年分を先に払っているため、2年を待たずに退去すれば、使わなかった期間の保険料は返ってきます。
ところが、この返還は自動では起こりません。退去して鍵を返しても、保険会社にはその情報が届かないからです。退去の連絡をしないまま満期を迎え、本来戻るはずだった金額がそのまま残ってしまう、ということが実際に起きています。金額としては数千円から1万円台が中心ですが、手続き自体は10分ほどで終わります。
- 賃貸借契約と保険契約は別の契約。退去しても保険は自動で止まらない。
- 途中解約で戻るのは未経過期間分。日割ではなく月単位で数える商品がほとんど。
- 目安の式は 保険料 ×(保険期間の月数 − 既経過月数)÷ 保険期間の月数。既経過の1か月未満は切り上げ。
- 2年20,000円で1年住んで退去なら、戻りの目安は約10,000円。
- 残り1か月未満だと返還が生じないことが多い。気づいた時点で早く出すほうが得。
- 引越し先でも同じ保険に入るなら、解約より先に転居の扱いを確認する。
- 確定額は保険会社の解約受付画面の表示額(または通知)。この記事の計算はあくまで目安。
まず「何が戻るのか」を分けて考える
退去のときにお金が動く先はいくつかあります。敷金の精算、保証会社の預り金、そして保険です。このうち保険は、管理会社でも仲介会社でもなく、保険会社に直接手続きするものです。敷金精算の書類を待っていても、保険の返戻金は動きません。
賃貸の家財保険は、保険期間2年・保険料一括払いという形が主流です(1年契約の商品もあります)。一括で払っているということは、まだ来ていない期間の分まで前払いしている状態です。途中で解約すると、この未経過期間に対応する保険料が計算され、指定した口座に振り込まれます。これが解約返戻金(返還保険料)です。
注意したいのは、返還の基準になるのが「退去した日」ではなく「解約の効力が生じる日」だという点です。退去から何か月も経ってから連絡した場合、その間の保険は有効に続いていたことになりますので、その分は戻りません。退去日が決まった段階で手続きの予定を入れておくのが確実です。
計算方法:月単位で数える
多くの商品は、経過した期間を日割ではなく月単位で数えます。そして、既経過期間に1か月未満の端数があるときは、切り上げて1か月として扱うのが一般的です。1か月と1日住んだ場合は「2か月経過」と数える、ということです。
解約返戻金の目安 = 保険料 ×(保険期間の月数 − 既経過月数)÷ 保険期間の月数
保険期間2年なら「保険期間の月数」は24。既経過月数は1か月未満を切り上げ。
たとえば保険料20,000円・保険期間2年(24か月)の契約で、ちょうど12か月で解約した場合は、20,000 ×(24 − 12)÷ 24 = 10,000円が目安になります。
解約返戻金の概算計算
未経過月数による概算です。既経過期間の1か月未満は切り上げて計算しています。実際の返還額は、ご契約の保険会社の約款(ご契約のしおり)の定めによります。
早見表(保険期間2年の場合)
手元に日付がないときの目安です。金額は「保険料 × 残り月数 ÷ 24」で計算した概算(円未満切り捨て)です。
| 経過した期間 | 保険料12,000円 | 保険料15,000円 | 保険料20,000円 |
|---|---|---|---|
| 6か月(残り18か月) | 9,000円 | 11,250円 | 15,000円 |
| 12か月(残り12か月) | 6,000円 | 7,500円 | 10,000円 |
| 18か月(残り6か月) | 3,000円 | 3,750円 | 5,000円 |
| 22か月(残り2か月) | 1,000円 | 1,250円 | 1,666円 |
| 23か月超(残り1か月未満) | 返還が生じないことが多い | ||
ご自身の保険料が分からない場合は、入居時に受け取った保険料領収証か保険契約申込書のお客様控えをご確認ください。初期費用の明細に「家財保険料」として載っていることもあります。参考までに、当社が代理店として取り扱う「全日ラビー住まいの保険」(引受:全日ラビー少額短期保険株式会社)のプランは、次のような構成です。
| 保険料(2年一括) | 家財の保険金額 | 借家人賠償・個人賠償 |
|---|---|---|
| 12,000円 | 165万円 | いずれのプランも1,000万円 (1事故・保険期間通算とも限度額1,000万円) |
| 15,000円 | 420万円 | |
| 18,000円 | 680万円 | |
| 21,800円 | 1,000万円 |
上表は代表的なプランの抜粋です。ほかに14,000円・16,000円・20,000円のプランがあり、地震災害見舞金特約を付けた商品では保険料が異なります。加入時期によっても改定されますので、実額は必ずご自身の書類でご確認ください。
手続きの分かれ道
会社によって窓口は異なりますが、多くはWeb(契約者専用サイト)と郵送の2本立てです。どちらになるかは、退去からの経過日数と、振込先口座の名義で決まることが多いと考えてよいと思います。全日ラビー住まいの保険の場合は、次のように案内されています。
| 状況 | 手続き方法 |
|---|---|
| これから退去する/退去日から30日以内 | 契約者専用サイトのWeb解約(24時間365日)。返還保険料の受け取りは即日または翌銀行営業日 |
| 退去日から31日以上経過している | 解約請求書(異動承認請求書)を記入して郵送 |
| 振込先の口座名義が保険契約者と異なる | 同上(郵送) |
| 解約日から満期日まで1か月に満たない | Web不可。電話(03-3261-2201/平日10時〜17時)で相談 |
Web解約に必要なのは、契約番号(ログインID)とご契約者の生年月日(西暦8桁)(初期パスワード。法人契約は登録電話番号)です。契約番号は保険契約申込書、保険料領収証、満期案内のハガキなどに記載があります。退去に伴う解約の専用ダイヤル(050-5369-3063・24時間365日受付)も用意されています。
手続きの画面では、解約日と振込先口座を入力すると返還される金額が表示されます。この記事の計算はあくまで目安ですので、最終的にはその表示額をご確認ください。
書面(解約請求書)での手続きの場合、公式の記入案内には次の3点が明記されています。実務上そのまま押さえておきたい内容です。
- 解約日は、原則として賃貸物件を退去された日。
- 退去日から30日を過ぎてから、退去日にさかのぼって解約する場合は、賃貸借契約の解約通知書や解約精算書など、退去日が確認できる書類が必要。
- 保険期間の残月数が1か月未満の場合、返還保険料はない。振込は、書類が到着して手続きが完了した日の翌月20日まで。
当社が取り扱う2社と、解約手続きの違い
当社は、全日ラビー少額短期保険(公益社団法人 全日本不動産協会グループ。会員向けシステムのラビーネットと同じ全日グループです)と日本共済株式会社の2社の家財保険を取り扱っています。どちらも賃貸入居者向けに、家財の補償・大家さんへの賠償(借家人賠償責任)・他人への賠償(個人賠償責任)をひとまとめにした商品です。
当社が代理店として行うのは、ご加入時の商品説明とプラン選び、申込手続きと保険料の領収・領収証の発行、ご契約内容の確認方法のご案内、退去時の解約手続きのご案内、事故が起きたときの受付窓口のご案内です。保険金のお支払いの可否や金額の決定は保険会社が行いますので、そのご判断そのものを当社が代わって行うことはできません。
解約の実務は、2社で細かい違いがあります。
| 項目 | 全日ラビー住まいの保険 | あんしん住まいる家財保険(日本共済) |
|---|---|---|
| 返戻金の考え方 | 約款に定める返還保険料。残月数が1か月未満のときは返還なし | 保険契約ハンドブックの「保険料返戻金額表」により、残存月数に応じて決まる。月払契約は返戻なし |
| 解約日 | 原則として賃貸物件を退去した日 | 鍵の返却日、または賃貸借契約の解約日 |
| 手続きの方法 | 契約者専用サイト(Web)/郵送/専用ダイヤル | マイページ(Web)/電話/郵送 |
| 振込の時期 | Web解約は即日または翌銀行営業日。郵送は手続完了日の翌月20日まで | 解約手続完了の翌月20日まで(保険料の収納方法により翌々月20日になる場合あり) |
いずれの会社でも、返戻金の計算に使われるのは残り月数です。日割で細かく戻るわけではないため、月をまたぐ前に手続きするかどうかで金額が変わることがあります。ご自身の契約がどちらの会社かは、保険料領収証か申込書のお客様控えに記載された保険会社名でご確認ください。
引越し先でも同じ保険に入るなら、順番に注意
次の住まいでも保険が必要になる場合、「解約して入り直す」以外の選択肢があります。全日ラビー住まいの保険には2022年12月1日から転居に関する特約が自動で付いており、転居後も同社と保険契約を結ぶ場合に限り、一定期間は新旧どちらの物件も補償される取り扱いになっています。追加保険料や別途の申請は不要とされています。
引越しは、旧居の鍵を返す日と新居に荷物を入れる日がずれるのが普通です。先に解約日を早く設定してしまうと、まだ荷物が残っている旧居が無保険になる、という状態が起こり得ます。解約日は原則として鍵の返却日に合わせ、次の契約と重なる期間の扱いは、手続きの前に代理店または保険会社へ確認してください。
つまずきやすい4点
- 退去後に放置してしまう。もっとも多いのがこれです。満期まで気づかなければ、返戻金はありません。退去の準備リストに「保険の解約」を入れておいてください。
- 入居中に解約してしまう。賃貸借契約では家財保険(借家人賠償責任を含む)への加入が条件になっていることが多く、無保険で住み続けると契約違反になり得ます。水漏れで階下に損害を与えた場合の賠償も自己負担になります。
- 振込先の名義が違う。返還保険料は原則として保険契約者名義の口座へ振り込まれます。ご家族名義の口座を指定したい場合などは、書面での手続きになります。
- 更新(満期)の直前に退去する。残り期間が短いと返戻はごくわずか、または生じません。一方で、退去するのに更新の案内が届いてそのまま継続してしまう、という取り違えは避けたいところです。
- 保険料領収証か申込書控えを探し、契約番号・保険料・保険始期日を確認したか
- 保険期間(2年か1年か)と満期日を確認したか
- 解約日を鍵の返却日に合わせて決めたか
- 振込先を保険契約者名義の口座で用意したか
- 引越し先でも保険が必要か、同じ会社で継続するかを決めたか
- 賃貸借契約書で、保険加入が入居条件になっていないか確認したか(在室中の解約防止)
- 退去日から30日を過ぎていないか(過ぎていれば郵送手続き)
私、鳥越が退去のご相談を受けるとき、敷金の話は必ず出るのに、保険の話はほとんど出ません。契約時に一度払ったきりで、忘れられてしまうお金だからだと思います。金額そのものは大きくありませんが、放っておけばゼロ、10分の手続きで数千円から1万円台、という差は無視できません。退去日が決まったら、鍵の返却日と一緒に保険の解約日も決めてしまう。これを習慣にしていただければ、取りこぼしはなくなります。
よくある質問
退去すれば家財保険は自動的に解約されますか?
されません。賃貸借契約と保険契約は別の契約で、解約の連絡がなければ保険は満期まで続いたままになります。退去後に連絡しても解約はできますが、返る金額は解約の手続きをした時点を基準に計算されるため、気づくのが遅いほど戻る額は小さくなります。退去日が決まった時点で、鍵の返却日に合わせて手続きするのが確実です。
家財保険の解約返戻金はどう計算しますか?
賃貸の家財保険は1年または2年の一括払いが一般的で、途中解約すると残り(未経過)の期間に対応する保険料が返ります。多くの商品は日割ではなく月単位で、既経過期間の1か月未満は切り上げて1か月と数えます。目安の式は「保険料 ×(保険期間の月数 − 既経過月数)÷ 保険期間の月数」です。実際の返還額は契約している保険会社の約款(ご契約のしおり)の定めによります。
満期まで残りわずかでも解約したほうがよいですか?
金額としては小さくなります。残り1か月に満たない場合は返還が生じないことが多く、Web上の解約受付を利用できない扱いになっている会社もあります。ただし返戻金の有無にかかわらず、住んでいない部屋の保険を残しておく意味はありませんので、退去の連絡自体は行っておくことをおすすめします。
引越し先でも同じ家財保険に入る場合はどうなりますか?
解約して入り直す前に、契約している保険会社に転居の扱いを確認してください。全日ラビー住まいの保険では、転居に関する特約が自動で付いており、転居後も同社と契約する場合に限り、一定期間は新旧どちらの物件も補償される取り扱いになっています(2022年12月1日以降)。手続きの順番によって、引越し期間中の補償の切れ目が変わります。
入居中に家財保険だけ解約してもよいですか?
おすすめしません。賃貸借契約で家財保険(借家人賠償責任補償を含む)への加入が入居条件になっていることが多く、無保険のまま住み続けると契約違反になり得ます。また、水漏れで階下に損害を与えた場合などの賠償は自己負担になります。保険料を見直したい場合は、解約ではなく、更新のタイミングで補償内容とプランを相談してください。
公式情報
- 全日ラビー少額短期保険:解約のお手続き
- 全日ラビー少額短期保険:ご契約者様メニュー(事故受付・解約・クーリング・オフ)
- 全日ラビー少額短期保険:保険商品のご案内(パンフレット)
- 日本共済株式会社:よくある質問(解約)
- 日本共済株式会社:あんしん住まいる家財保険
- 公益社団法人 全日本不動産協会
まとめ
家財保険の解約返戻金は、「残りの月数 ÷ 契約全体の月数」を保険料に掛けた金額が目安になります。2年で20,000円の契約なら、1年で退去して約10,000円。決して大きな額ではありませんが、連絡をしなければゼロのままです。
退去の実務では、鍵の返却、敷金の精算、ライフラインの停止と、やることが並びます。その並びのなかに保険の解約を一行加えるだけで、取りこぼしは防げます。当社は全日ラビー少額短期保険と日本共済の2社を取り扱っており、ご契約いただいたお客様には退去の際にご案内しています。他社でご契約のお部屋についても、書類の見方が分からないといったご相談はお受けしています。
本記事は2026年9月9日時点の一般的な解説です。返還保険料の計算方法・手続き・受付窓口は保険会社および商品によって異なり、改定されることもあります。個別の契約については、ご契約のしおり(約款)と保険会社の案内をご確認ください。記事中の計算は目安であり、金額を保証するものではありません。