Column ・ 物件選びの実用ガイド ・ Vol.304

日当たりは内見の
1時間ではわからない

図面に「南向き」と書かれていても、冬の午前中はずっと影の中、ということが起こります。住所から建物の影の動きを事前に確かめる方法と、そこで分かること・分からないことを整理します。

お部屋探しでも、住まいの購入でも、日当たりは決め手のひとつです。ところが実際に日当たりを確認できるのは、内見に立ち会う一時間ほど。それは一年365日のうちの一日を、しかも都合のよい時間帯だけ切り取って見ていることになります。この一時間で「明るいですね」と判断した部屋が、住み始めてから思っていたのと違った、という声は現場でよく聞きます。

以前の「南向きだけで賃貸マンションを決めない方がいい理由」では、方角の表記だけで判断しない、という考え方を書きました。この記事はその続きにあたります。では実際にどう確かめればよいのか。住所から影の動きを見る手順と、そこで分かること・分からないことを整理します。

この記事の結論
  • 方角(南向き・東向き)は目安にすぎず、実際の日照を決めるのは周囲の建物と太陽の高さ。
  • 太陽高度は季節で大きく変わり、冬は影が夏の何倍も長く伸びる。夏の内見だけでは判断できない。
  • ShadeMap(shademap.app)などのツールで、地図上の場所と日時を指定すれば影の動きを事前に確認できる。
  • 確認は冬至前後(12月下旬)を基準に。そこで日が入るなら他の季節はより明るい。
  • ただし窓の位置、バルコニーの奥行き、室内への到達距離、将来の建て替えは分からない。
  • 建物の高さデータには抜けがあるが、高さを手で入力して補正できる。
  • ツールは答えではなく、内見で確かめるべき点を絞るための道具と考える。

「南向き」が示しているのは方角だけです

図面の「南向き」は、開口部がどちらを向いているかを示しているにすぎません。実際にその窓へ日が届くかどうかは、前面に何が建っているか、そこまでの距離がどれだけあるか、そしてその時期の太陽がどの高さにあるかで決まります。

東京付近では、太陽の南中高度は夏至のころに約78度まで上がり、冬至のころには約31度まで下がります。角度が下がると影は長くなります。夏には前の建物の影が足元で収まっていたのに、冬には道路を越えて向かいの建物の中層階まで届く、ということが現実に起こります。

時期東京付近の南中高度(目安)影の出方
夏至ごろ(6月下旬)約78度影は短い。ほとんどの部屋が明るく感じる
春分・秋分ごろ約55度中間。ここを基準に語られることが多い
冬至ごろ(12月下旬)約31度影が最も長い。日照の可否がはっきり分かれる

つまり、日当たりの「最悪の条件」は冬至前後にあります。ここで日が入る部屋であれば、他の季節はより明るくなります。判断はこの時期を基準に置くのが実用的です。

住所から影の動きを見る

影のシミュレーションを手軽に見られるサービスとして、ShadeMap(shademap.app)があります。地図上で場所を検索し、画面下部の時刻を左右にドラッグすると、建物や地形がつくる影がその動きに合わせて変化します。日付も変えられるため、季節ごとの違いをその場で比べられます。アカウント登録は不要で、基本的な機能はブラウザから無料で使えます。画面表示は英語ですが、操作は時刻のドラッグと日付の切り替えが中心で、迷う場面は少ないと思います。

ほかに、一日または一年を通した日照時間の積算表示、太陽の方位を示す線、地図を傾けて立体で確認する機能などがあります。表示している状態をそのままリンクとして共有できるため、ご家族や担当者に「この時間帯が気になる」と伝えるのにも使えます。

実際の見方は、次のような順序が分かりやすいと思います。

  • 検討中の物件の住所または最寄りの交差点で地図を表示し、建物の位置を特定する
  • 日付を12月下旬(冬至前後)に設定する
  • 時刻を午前8時ごろから夕方まで動かし、窓が向いている側に影がかかる時間帯を見る
  • 次に6月下旬(夏至前後)に切り替え、西日の入り方を確認する
  • 気になる時間帯があれば、その時間に内見できないか相談する

→ ShadeMap を開いて試してみる(shademap.app)

ここで見たいのは「明るいか暗いか」ではなく、どの時間帯に影が来るかです。日中は仕事で不在の方にとって、午前中の影はさほど問題にならないかもしれません。一方、在宅勤務が中心の方や、洗濯物を室内に干す時間が決まっている方にとっては、時間帯そのものが判断材料になります。

データの出どころと、その限界

無料で表示される影は、クラウドソースで整備された建物情報(OpenStreetMapなどを統合したOverture Mapsのデータ)と、樹木の高さの推定値から計算されています。世界中を広くカバーしている反面、精度は場所によって差があります。試しに新宿駅西口から都庁にかけての一帯について公開データを調べてみたところ、登録されている建物およそ1,600件のうち、高さまたは階数の情報を持つものは3割ほどでした(2026年8月時点)。高層の主要ビルには高さが入っている一方、中小のビルや住宅では抜けているものが少なくない、という状態です。

ただし、この弱点には手を打てます。ShadeMapでは影のもとになる建物の高さを自分で入力して補正できるため、前面の建物の階数が図面や現地で分かっているなら、その高さを入れ直したうえで影を見る、という使い方ができます。さらに精度が必要な場合には、LiDARや写真測量にもとづく高精度データをエリア単位で購入する選択肢も用意されています(月額の定額契約ではなく、必要な範囲だけの都度購入です)。もっとも、その高精度データにも計測日があり、計測日より後に建った建物は影に反映されません。

実務で使う際は、次の点を前提として理解しておく必要があります。

分かること分からないこと
周囲の建物・地形がつくる影の、時刻ごとの位置窓の位置・大きさ、庇やバルコニーの奥行き
季節による影の長さの違い室内のどこまで光が届くか、床までの明るさ
おおよその日照時間の積算建物高さの誤差、新築・解体直後の未反映
前面の建物との距離感隣地に将来どんな建物が建つか

特に最後の一点は、購入を検討される方にとって大きな論点です。いま隣が駐車場や低層の建物であっても、その敷地の用途地域や高さ制限によっては、将来もっと高い建物が建つ余地があります。用途地域や高度地区、日影規制の内容は各自治体の都市計画情報で公開されていますので、購入前には合わせて確認しておくと安心です。建築基準法には中高層建築物の日影規制の定めがありますが、規制の対象や時間数は自治体の指定によって異なります。

賃貸と購入で、見る深さが変わります

同じ日当たりの話でも、契約の形によって確認すべき深さは変わります。

  • 賃貸の場合:住むのは数年間です。冬の午前に日が入るか、洗濯物が乾くか、暖房費や結露にどう影響しそうかといった、暮らしの実感に直結する範囲で十分なことが多いと思います。合わないと感じれば住み替えられる自由もあります。
  • 購入の場合:将来の資産性まで関わります。現時点の日照だけでなく、隣地に建ちうる建物の高さ、前面道路の幅員、地域の再開発計画まで含めて確認したいところです。日当たりは中古で売却するときの評価にも影響します。

どちらの場合も、シミュレーションで気になる点が見つかったら、そのまま不安を抱えるのではなく、内見の時間帯を調整する、別の階を見せてもらう、といった具体的な行動につなげることが大切だと考えています。

鳥越の見方

私、鳥越がこうしたツールをお客様にご案内すると、「では内見は要らないのですか」と聞かれることがあります。私はむしろ逆だと思っています。事前に分かることが増えるほど、現地で確かめるべきことがはっきりしてきます。「冬の午前は前の建物の影に入りそうだから、南側の窓の高さと、上階との違いを見ておこう」というように、限られた内見の時間を本当に見るべきものへ使えるようになります。道具は答えを出してくれるのではなく、問いを絞ってくれるものだと感じています。

内見前チェックリスト

  • 冬至前後の日付で、午前・正午・午後の影のかかり方を確認したか
  • 夏至前後に切り替えて、西日の入り方を見たか
  • 自分が在宅している時間帯に、日が入るかどうかを見たか
  • 前面の建物との距離と高さを、地図上で把握したか
  • 前面の建物の高さがデータに入っているか。抜けていれば階数から手入力して見直したか
  • 隣地に空地・駐車場・低層建物がある場合、用途地域と高さ制限を調べたか
  • 気になる時間帯に内見できないか、担当者に相談したか
  • 現地では、窓の高さ・庇の出・バルコニーの奥行きを見たか
  • 同じ建物の上下階で条件が変わらないか確認したか

よくある質問

内見で日当たりを確かめれば十分ではありませんか?

内見は一年のうちの一日、しかも一時間ほどの断片です。太陽の高さは季節で大きく変わり、冬は低く影が長く伸びるため、夏に明るく感じた部屋が冬の午前中は前の建物の影に入る、ということが起こり得ます。事前に影の動きを見ておくと、内見で確かめるべき点を絞ることができます。

住所を入れて日当たりを確認できるサイトはありますか?

代表的なものにShadeMap(shademap.app)があります。地図上で場所を検索し、画面下部の時刻をドラッグすると、建物や地形がつくる影が動いて表示されます。日付も変えられるため、冬至や夏至など季節ごとの見え方を比べられます。アカウント登録は不要で、基本的な機能はブラウザから無料で利用できます。画面表示は英語です。

日当たりはいつの季節で確認するべきですか?

太陽がもっとも低くなる冬至前後(12月下旬)を基準に見るのが実用的です。この時期に日が入る部屋であれば、他の季節はより明るくなります。あわせて夏至前後も確認し、西日の入り方や暑さの見当をつけておくと判断しやすくなります。

影のシミュレーションで分からないことは何ですか?

窓の位置や大きさ、バルコニーの奥行き、庇や隣室の壁、室内のどこまで光が届くかは分かりません。無料で表示される影はクラウドソースの建物データと樹木の高さの推定値にもとづくため、高さの抜けや誤差もあります(建物の高さは手で入力し直して補正できます)。新築や解体の直後も反映されていないことがあり、将来隣地に何が建つかも分かりません。最終的な確認は現地で行う前提の道具です。

公式情報

まとめ

日当たりは、図面の方角ではなく、周囲の建物と季節ごとの太陽の高さで決まります。そして内見で見られるのは、その一年のうちのごく一部にすぎません。住所から影の動きを見られるツールを一度開いておくだけで、冬の午前に日が入るのか、西日はどの程度なのかという見当がつきます。

ただし、それは現地確認の代わりにはなりません。窓の高さも、庇の出も、部屋の奥の明るさも、行かなければ分からないままです。事前に問いを絞り、現地でその問いに答えを出す。この順序で見ていただくと、住まい選びの納得感は大きく変わると感じています。

本記事は2026年8月29日時点の一般的な解説です。紹介したサービスの機能・料金体系は変更される場合があります。日影規制や高さ制限の内容は自治体・地域により異なりますので、個別の判断は各自治体の都市計画窓口や専門家にご確認ください。

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日当たりの不安、現地で一緒に確かめます。

気になる時間帯の内見調整も含めて、納得できるまでお付き合いします。まずはご希望をお聞かせください。