卒業・就職・転勤など、年明けから春にかけては引越しが集まる季節です。退去日の調整や荷造り、初期費用の準備に追われるなかで、つい忘れられてしまうのが「契約のときに入った火災保険」。実はこの保険、賃貸を途中で解約すると、まだ使っていない期間分の保険料が返戻金として戻ってくることがあります。お引越しは何かと出費がかさむもの。少しでも戻るなら取りこぼしたくない、という視点で基礎知識を整理します。
- 賃貸で加入する火災保険(家財保険)は、2年分などをまとめて前払いしているケースが多い。
- 契約期間を残して途中解約(引越し)すると、未経過期間分が「返戻金」として戻ることがある。
- 退去しても自動では戻らない。自分で保険会社へ解約を申し出て、返戻金を申請する必要がある。
- 更新した直後に引越しが決まった場合など、残り期間が長いほど戻る額も大きくなりやすい。
- 短期・少額の契約や残り期間がわずかな場合は、返戻金がない・少額のこともある(2026年時点)。
そもそも、賃貸の火災保険とは
賃貸物件を契約するとき、ほとんどの場合セットで加入するのが火災保険です。正式には「家財の火災保険」で、契約によっては借家人賠償責任保険(借りている部屋を壊した・水漏れさせた場合に大家さんへ賠償する補償)や、個人賠償責任保険(階下など近隣への損害の補償)が組み合わさっています。自分の家財を守るだけでなく、万一のときに大家さんや近隣への責任もカバーする、賃貸生活の土台になる保険です。保険料はプランにもよりますが、2年で2万円前後が一つの目安です。
なぜ「返戻金」が戻るのか
この保険料は、契約期間分を前払い(一括払い)していることが多いのがポイントです。たとえば2年分をまとめて支払っている場合、契約から1年で退去すると、残りの約1年分は「まだ使っていない期間(未経過期間)」になります。この払いすぎにあたる部分が、返戻金として戻ってくるという仕組みです。特に、賃貸借契約の更新と同時に火災保険も更新した直後に転勤や引越しが決まったようなケースでは、残り期間が長い分、戻る額も大きくなりやすくなります。
退去しても「自動では戻らない」のが落とし穴
いちばん見落とされやすいのがここです。部屋を退去して賃貸借契約を解約しても、火災保険はそれとは別の契約なので、自動では終わりませんし、返戻金も自動では振り込まれません。保険会社(または加入時の代理店)へ自分で解約を申し出て、はじめて返戻金の手続きが始まります。放っておくと、次の人が入居しているのに保険料を払い続けてしまう、あるいは戻るはずのお金を受け取り損ねる、ということになりかねません。「退去したら終わり」ではなく、「保険は別で解約する」と覚えておきましょう。
返戻金を受け取る手順
難しい手続きではありません。おおまかには次の流れです。
- ① 保険証券を探す:契約時にもらった書類一式や申込控えから、保険会社名・代理店・証券番号を確認します。見当たらなければ、仲介・管理会社に問い合わせると分かることが多いです。
- ② 保険会社(代理店)へ連絡:解約したい旨と、退去日(解約希望日)を伝えます。あわせて返戻金の有無と金額も確認します。
- ③ 解約書類を提出:解約届や振込先口座の情報を提出します。
- ④ 返戻金の振込:計算結果に基づき、後日指定の口座に振り込まれるのが一般的です。
ひとつだけ大切なコツがあります。手続きが遅れるほど未経過期間は短くなり、戻る額も少なくなっていきます。退去日が決まったら、できるだけ早めに動くのがおすすめです。
気をつけたい5つのポイント
「戻る」といっても、いくつか注意しておきたい点があります。
- 満額は戻らないのが一般的:未経過分そのままではなく、短期率などにより少なめの割合で計算されます。
- 残り期間がわずか・短期契約:契約終了間近や1年未満の契約では、返戻金が発生しない・少額のこともあります。
- 月払い・少額のプラン:そもそも返戻の対象外の商品もあります。まずは契約内容の確認を。
- 無保険の期間を作らない:引越し先でも新たに火災保険が必要です。旧居の解約日と新居の補償開始日をつなげておきましょう。
- 指定された保険でも解約・返戻はできる:不動産会社経由で加入した保険でも、退去時はご本人(または代理店経由)で手続きが可能です。
- 火災保険は賃貸借契約とは別の契約。退去=自動解約ではなく、自分で解約を申し出る必要がある。
- 前払いした保険料のうち、まだ使っていない未経過期間分は返戻金として戻ることがある。
- 更新した直後の引越しなど、残り期間が長いほど戻る額は大きくなりやすい。
- 手続きが遅れると戻る額が減るため、退去日が決まったら早めに動くのが得策。
見落としやすいのは、こんなケース
返戻金を取りこぼしがちなのは、次のような場面です。心当たりがあれば、退去のタイミングで一度確認してみてください。
まず、契約更新の直後に転勤や引越しが決まったケース。更新と同時に保険も掛け直していることが多く、残り期間が長いため戻る額も大きくなりやすい典型です。次に、実家に戻る・結婚や同棲で住まいを一本化するケース。新居側で別に保険に入るなら、旧居側の保険は忘れずに解約しておきましょう。
また、家賃の口座から保険料が一緒に引き落とされていて、加入していること自体を忘れていたという方も少なくありません。更新のたびに自動で継続していた保険は、退去のときにあらためて存在を思い出したい項目です。気になる点は口頭で済ませず、証券番号を控えて保険会社に確認しておくと確実です。
- 加入している火災保険の保険会社・証券番号
- 契約期間と、支払いが一括前払いかどうか
- 退去日(解約希望日)と返戻金の有無・目安額
- 新居の火災保険(補償開始日を旧居の解約日とつなぐ)
迷ったときの考え方
返戻金の額は、数千円〜1万円台にとどまることも多く、決して大きな金額ではありません。それでも、「知っていれば戻るお金」を取りこぼさないための、ほんのひと手間です。お引越しは敷金の精算や新居の初期費用など、お金の出入りが重なる場面。戻せるものはきちんと戻し、その分を新生活にあてる——そんな小さな積み重ねが、結果的に負担を軽くしてくれます。
手続きに不安があれば、まずは保険証券を手元に用意して、保険会社か加入時の窓口に「途中解約したら返戻金はありますか」と一言たずねてみるところから始めてみてください。
よくある質問
返戻金はいくらくらい戻りますか?
契約プランと解約のタイミングによります。2年でおおむね2万円前後の家財保険であれば、残り1年ほどを残して解約した場合に数千円〜1万円程度が目安になることが多いです。ただし短期率などで満額より少なめに計算されるため、正確な額は保険会社にご確認ください。
退去したのに解約手続きを忘れていました。今からでも戻りますか?
解約日はさかのぼらず、申し出た時点からの未経過分が返戻金の対象になるのが一般的です。契約期間がまだ残っていれば戻る可能性がありますので、気づいた時点でできるだけ早く保険会社へご連絡ください。
不動産会社ですすめられた保険でも自分で解約できますか?
できます。加入の窓口が代理店であっても、契約者はご本人です。証券番号がわかれば保険会社に直接、または加入時の代理店を通じて解約と返戻金の手続きができます。
まとめ
火災保険の返戻金は、金額こそ数千円〜1万円台のことが多いものの、「知っていれば戻るお金」です。ポイントは、退去しても自動では戻らないこと、そして自分で早めに解約を申し出ること。旧居の保険は忘れずに解約し、新居では無保険の期間を作らない——この2点を押さえておけば、取りこぼしはぐっと減ります。退去や初期費用のことで迷ったら、お気軽にご相談ください。スタンドアップでは、退去時に確認しておきたい項目もあわせてお手伝いします。