内見にお立ち会いするとき、私が部屋に入って最初にするのは、窓を開けることです。今日はその理由と、内見で本当に見てほしいポイントの話を書いてみます。
部屋は「静止画」では分からない
内見に来られたお客様の多くは、壁や床の傷、収納の広さ、水回りのきれいさを丁寧に確認されます。もちろん大事なことです。ただ、長くこの仕事をしていると、入居後の「こんなはずでは」は、写真に写るものよりも、写らないもので起きることが多いと感じます。
音、におい、風、光。窓を開けると、その部屋の「動いている状態」が分かります。通りの音がどれくらい入るか、隣の建物との距離感、風が抜けるかどうか。閉め切った部屋は、いわば静止画です。実際の暮らしは動画なので、内見の数分間だけでも、部屋を「動かして」みてほしいのです。
以前、日当たりも間取りも申し分ない部屋で、お客様が窓を開けた瞬間に「ここはやめておきます」と言われたことがあります。近くの飲食店の排気が、ちょうど窓の高さに流れてくる部屋でした。図面にも写真にも、絶対に載らない情報です。あの一言で、私自身も内見の案内の仕方が変わりました。
部屋より雄弁なのは「共用部」
もうひとつ、私が必ず見ていただくのは、部屋の外側です。郵便受け、ゴミ置き場、廊下、駐輪場。ここには、その建物に住んでいる人たちの暮らしぶりと、管理の質が正直に表れます。
郵便受けからチラシがあふれていないか。ゴミ置き場が荒れていないか。共用廊下に私物が置きっぱなしになっていないか。部屋の中はリフォームで生まれ変わりますが、共用部の空気は住人と管理会社が長い時間をかけてつくるもので、一朝一夕には変わりません。部屋が暮らしの「中身」だとすれば、共用部は暮らしの「土台」です。
内見は、たいてい15分か20分の短い時間です。その中で部屋に点数をつけようとすると、つい目に見える傷の数を数えてしまう。でも本当に見るべきなのは、傷の数ではなく、そこで始まる毎日のほうだと思っています。
明日もどこかの部屋で、まず窓を開けます。
— 株式会社スタンドアップ 代表取締役 鳥越 雄太郎