Column ・ 法人社宅 ・ Vol.02

役員社宅の家賃計算に必要な「固定資産評価証明書」の取り方

役員社宅の賃貸料相当額を算式で計算するには、建物と敷地の固定資産税課税標準額を確認できる「固定資産評価証明書」が欠かせません。会社が所有者でなくても取得できる仕組みから、必要書類・手数料、計算に使ううえでの注意点まで整理します。

役員社宅の本人負担を算式で計算する際に欠かせないのが、建物と敷地それぞれの固定資産税課税標準額です。これを確認できる公的な書類が「固定資産評価証明書」ですが、「会社は物件の所有者ではないのに取得できるのか」という疑問を持たれる方が少なくありません。結論として、賃貸借契約の借主であれば会社としてこの証明書を請求できます。本記事では、借上げ社宅における評価証明書の取得方法を中心に、必要書類・手数料、計算に使ううえでの実務上の注意点までまとめました。

この記事の要点
  • 役員社宅の賃貸料相当額(小規模住宅の場合)は、建物と敷地の固定資産税課税標準額を使った算式で計算する。
  • 固定資産評価証明書は所有者本人でなくても、賃貸借契約の借主(借家人)であれば会社として請求できる(東京23区は都税事務所、23区外は市区町村の窓口)。
  • 本人が窓口に行けない場合は、委任状があれば不動産会社や税理士などによる代理取得も可能。媒介契約書だけでは取得できず、別途委任状が必要。
  • 「評価額」と「課税標準額」は別物で、社宅の家賃計算には課税標準額を使う。マンションの敷地は敷地権割合で按分する。
  • 証明書はなるべく最新年度のものを取得し、契約形態や物件によって扱いが異なる場合は税理士に確認する。

1. なぜ評価証明書が必要か

役員社宅の賃貸料相当額(小規模住宅の場合)は、所得税基本通達に定められた次の3つの合計で計算します。

賃貸料相当額の算式(小規模住宅)
  • ①その年度の建物の固定資産税課税標準額 × 0.2%
  • ②12円 ×(建物の総床面積(㎡) ÷ 3.3㎡)
  • ③その年度の敷地の固定資産税課税標準額 × 0.22%

この算式で使う①と③の「課税標準額」は、実際の市場価格や市場家賃とは別の、固定資産税の計算上使われる金額です。金額を確認するには、市区町村(東京23区は都税事務所)が管理している固定資産課税台帳の記載事項を証明してもらう必要があり、これが固定資産評価証明書です。算式の考え方や小規模住宅の判定基準そのものについては、Vol.01「役員社宅で自宅家賃の8割を会社負担にする方法」で詳しく整理しています。

役員本人からの徴収額(社宅使用料)が、この算式で計算した賃貸料相当額以上であれば、会社が負担している家賃との差額は給与として課税されません。逆に言えば、評価証明書を取得して正確な課税標準額を把握しておかなければ、そもそも本人負担額を適切な水準に設定できないことになります。

2. 借上げ社宅でも取得できる

固定資産評価証明書というと「所有者しか取得できないのでは」というイメージを持たれがちですが、地方税法の規定により、固定資産課税台帳に記載されている事項のうち、自分が借りている家屋・土地に関する部分については、賃貸借契約の借主(借家人)も証明を請求できます。役員社宅の場合、賃貸借契約の借主は会社になりますので、会社として証明書を請求すれば問題ありません。

請求先は物件の所在地によって異なります。東京23区内の物件であれば、その物件が所在する区を管轄する都税事務所が窓口になります。23区外や東京都以外の地域では、物件が所在する市区町村役場の固定資産税担当窓口が請求先です。物件所在地の自治体窓口を事前に確認したうえで請求することになります。

3. 必要書類と手数料

会社として評価証明書を請求する場合、一般的に必要になるのは次のような書類です。自治体によって求められる書類の範囲が異なるため、訪問前や郵送前に窓口へ確認しておくことをおすすめします。

請求時に一般的に必要な書類
  • 賃貸借契約書(会社が借主であることと、対象物件がわかる部分のコピーで可とされることが多い)
  • 窓口に行く人の本人確認書類
  • 法人が借主の場合、担当者が代表者本人でないときは委任状や社員証等の提示を求められる場合がある

手数料は自治体ごとに定められており、東京都の場合は評価証明書1件につき400円です(同一区内・同一名義人の2件目以降は100円)。窓口に出向く時間が取りにくい場合は、多くの自治体で郵送による請求にも対応しています。郵送請求では、申請書のほか賃貸借契約書のコピー、本人確認書類のコピー、手数料分の定額小為替、返信用封筒(切手貼付)を同封するのが一般的な流れです。郵送請求の具体的な宛先・同封物・所要期間は、東京23区のケースをVol.01にまとめていますので、あわせてご確認ください。

4. 自分で窓口に行けないときは:委任状による代理取得

所有者(納税義務者)本人や借家人本人が窓口に行けない場合は、委任状があれば第三者による代理取得も可能です。不動産会社や税理士に証明書の取得を依頼するケースも、この代理取得にあたります。

委任状に記載する主な事項
  • 対象物件の所在(できれば家屋番号・地番まで)
  • 請求する証明書の種類(評価証明書か公課証明書か)
  • 通数・対象年度
  • 委任者の署名(法人の場合は法人名・代表者名を記載し、法人印を押印)

実印や印鑑証明書の添付までは通常求められませんが、自治体によって運用が異なるため、事前に確認しておくと安心です。あわせて、窓口に行く代理人自身の本人確認書類(運転免許証等)も必要になります。

注意したいのは、不動産会社が売却の媒介契約を結んでいても、媒介契約書だけでは証明書の交付対象となる法定の資格(納税義務者・借地借家人・相続人・処分権限者など)にはあたらないという点です。媒介契約とは別に、委任状を用意するのが原則的な取り扱いになります。

借上げ社宅の文脈では、法人(借主)の代表者本人が窓口に行く場合は委任状は不要で、賃貸借契約書・本人確認書類・代表者であることがわかる資料があれば足ります。一方、従業員に取得を任せる場合は、会社からの委任状を持たせる必要があります。郵送請求の場合も、委任状の原本を同封すれば代理での請求が可能です。

いずれの場合も、添付書類の細部は自治体や都税事務所ごとに運用差があるため、請求前に電話などで確認しておくことをおすすめします。

弊社でも、委任状をいただいたうえでの評価証明書の取得代行に対応しております。役員社宅の導入をご検討の際は、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。

5. 実務上の注意点

評価証明書を取得したら、算式に当てはめる前に押さえておきたい注意点がいくつかあります。

評価額と課税標準額は別の数字です。証明書には「評価額」と「課税標準額」の両方が記載されていることが多く、混同しやすい部分です。特に土地は、住宅用地に対する課税標準額の特例により、課税標準額が評価額よりも大幅に小さくなっているケースが一般的です。賃貸料相当額の算式で使うのは、あくまで課税標準額のほうです。

マンションの敷地は按分が必要です。区分所有のマンションの場合、証明書に記載される敷地の課税標準額は、多くの場合そのマンション敷地全体の金額です。算式に使う際は、この金額に登記上の敷地権割合(持分割合)を乗じて、対象の住戸に対応する分だけを按分して計算する必要があります。

最新年度の証明書を使います。固定資産の評価替え自体は3年に1度のタイミングで行われますが、課税標準額は評価替えの年度以外でも、負担調整の仕組みなどにより年度ごとに多少変動することがあります。証明書の年度は毎年4月頃に切り替わるため、賃貸料相当額の計算に使う際は、なるべく最新年度の証明書を取得しておくと安心です。

ここまでの内容は一般的な取扱いを整理したものであり、契約形態や物件の権利関係によって扱いが異なるケースもあります。実際の計算にあたっては、取得した証明書をもとに税理士に確認することをおすすめします。

6. よくある質問

評価証明書の取得に大家さんの許可は必要ですか?

地方税法上、借主自身の請求権にもとづく手続きのため、通常は大家の同意書などは求められません。ただし窓口ごとの運用には幅があるため、必要書類は事前に自治体へ確認しておくと安心です。

賃貸借契約書が法人名義でないと取得できませんか?

会社として証明書を請求するには、賃貸借契約書の借主欄に会社名が記載されており、その物件を会社が借りていることを確認できる状態であることが前提になります。契約者が役員個人のままだと、会社としての請求は難しくなります。

不動産会社や税理士に取得を代行してもらえますか?

所有者または借家人からの委任状があれば代理取得が可能です。媒介契約書のみでは原則取得できず、委任状が別途必要です。弊社でも取得代行に対応しております。

評価額と課税標準額はどう違いますか?

評価額は固定資産の時価をもとにした評価上の金額で、課税標準額は各種特例を適用したあとの、実際に税額計算の基礎となる金額です。特に住宅用地は特例により課税標準額が評価額より大幅に小さくなることが多く、社宅の賃貸料相当額の計算には課税標準額を使います。

証明書はいつ取得すればよいですか?

賃貸料相当額の計算に使うため、なるべく最新年度のものを取得します。年度は毎年4月頃に切り替わり、評価替え自体は3年に1度ですが、決算期や社宅使用料の見直しの前に取り直しておくと安心です。

まとめ

固定資産評価証明書は、役員社宅の賃貸料相当額を算式で計算するための出発点になる書類です。会社が物件の所有者でなくても、賃貸借契約の借主であれば請求できるため、借上げ社宅であっても取得自体に大きなハードルはありません。一方で、評価額と課税標準額の違いや、マンションにおける敷地の按分方法など、算式に当てはめる段階でつまずきやすい論点もあります。証明書を取得したら、記載内容の読み方を含めて税理士に確認しながら計算を進めることをおすすめします。本記事は2026年7月時点の情報です。個別の税務判断は税理士にご確認ください。

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